喫茶店文化の今と昔、そして未来へ

概要: 現代に喫茶店を営む店主と、喫茶店文化を研究する学生インタビュアーが、その魅力や時代の変化、そして未来について語り合います。

第一章:喫茶店との出会いと、その魅力

店主

そうですね、僕の喫茶店通いは20代ですかね。今35なんですけど、20代前半からよく行ってましたね。

インタビュアー

私の母が50なんですけど、母が20代の頃にはもう喫茶店が減少傾向にあった時代だったみたいで。ちょうど震災があって、ファミレスやドトールが出てきて、だんだん高齢の方が通う場所になっていったと。20代だと、周りのお友達とかは喫茶店に行ってましたか?

店主

行ってないですね。僕は仕事が終わってからとか、休憩中に職場の近くにある喫茶店に行ってました。

インタビュアー

どういったところに惹かれていたんですか?

店主

やっぱり、あの空間が好きで。それが一番ですね。あと、レポート見させてもらったんですけど、僕もお母さんと一緒でタバコを吸うために行ってたところもあります。今はもう吸わないんですけど(笑)。

インタビュアー

タバコも喫茶店の魅力の一つですよね。もともとタバコを吸う人の集まりから発展した、という説も読んだことがあります。

店主

そうそう。落ち着ける空間でタバコが吸えるっていうのが大きかったですね。当時はまだ喫茶店の数も今よりはありましたけど、やっぱりどんどん減っていった感覚はあります。僕が行ってたお店も閉店しちゃったりしてますし。

第二章:「昔の喫茶店」と「今の喫茶店」

インタビュアー

昔の喫茶店と今の喫茶店で、違いは感じますか?

店主

お店を始めてから感じるのは、客層が違いますね。最近、僕らみたいな若い世代が新しく喫茶店を始めていて、そこのターゲット層と、昔からあるお店の客層はやっぱり違うなと。昔ながらの常連さんで成り立っているお店もあれば、駅の近くで色んな人が入ってくるお店、喫煙室代わりに使われるお店、住宅街でみんなで競馬見てるようなお店とか、本当にカラーが色々あります。

インタビュアー

最近は「レトロブーム」で、若い世代のお客さんが増えているとも聞きますね。

店主

そうですね。デジタルが進みきって、逆にアナログの良さ、ちょっと不自由な感じが「良い」っていう感覚があるのかなと。うちの店のデザインも、今の無機質なカフェとは違って「斬新だ」って言ってくれる若いお客さんが多いです。上の世代の方には「懐かしい」って言われますし。だからうちの店は年齢層が広いんですよ。

インタビュアー

確かに、この前伺ったとき、カウンターに座られてる方の年齢層もバラバラでした。若い人からすると体験したことない時代の内装だから面白いんでしょうね。周りの大学生でも喫茶店巡りが流行ってます。

店主

若い子からすると「おばあちゃん家みたい」っていう感覚が多いみたいで、そこから安心感やくつろぎに繋がっているのかなと。あとは調度品の良さですね。うちは色んな喫茶店さんから譲ってもらった椅子やテーブルを使ってるんですけど、物がしっかりしてる。今のコスパ重視のカフェの家具とは違う、その良さに気づいてくれる人もいますね。

第三章:「喫茶店の定義」とは何か

インタビュアー

「喫茶店の定義」って結構曖昧ですよね。店主さんの中では、どう定義されていますか?

店主

難しいですね…ずっと考えてるんですけど、共通しているのは「くつろげる空間」かなと。いろんな喫茶店に行くと、店主の趣味嗜好が全面的に出てるお店が多いんですけど、共通して言えるのは、紙コップじゃなく陶器のカップでゆっくりコーヒーを飲む、ということ。カフェとの違いで言うと、調度品の重厚さとか、70年代、80年代に良いとされていたデザイン思想があるのかなと。

当時のお店は、何十年も使えるようにタイルやガラスでしっかり作り込んでいたらしいんです。そういうお金のかけ方が、今のカフェとは違うのかなと感じますね。

インタビュアー

そういった昔ながらの喫茶店が減っているのは、どうしてなんでしょうか?

店主

昔は喫茶店ってすごく儲かったらしいんです。コンビニもない時代で、会社への出前もすごかったとか。でも今はカフェやコンビニもあって、当時ほど儲からない。それで後継者がいないまま、マスターが高齢になって引退されて、どんどん減っていってる感覚ですね。

第四章:経営と文化のジレンマ

インタビュアー

今の時代、喫茶店を経営していくのは難しいと思うんです。回転率を上げようとすると、時間制限を設けたりして、「落ち着ける」という魅力が失われることになりませんか?

店主

そうですね、うちも最近90分制にしたんですよ。ただ、常連さんが多いお店って、自然と席の譲り合いが生まれるんですよね。「また明日も来るから」っていうベースがあるから。僕らみたいにSNSとかで見て、遠くからわざわざ来てくれるお店だと、「せっかく来たんだから」っていう気持ちが強くなるのも分かります。だから、時間を制限せざるを得ない部分もあって…。理想は、地域に根付いて、常連さんが自然と譲り合えるようなお店になっていくことですね。

第五章:SNSとの向き合い方

インタビュアー

集客のためにSNSは意識されていますか?これからの喫茶店業界は、SNSに力を入れていくべきだと思いますか?

店主

うちは宣伝というより、新しいニュースをお知らせする感覚で使ってます。個人的な思いですけど、SNSでの集客に頼りすぎると、喫茶店がただの「ブーム」で終わってしまうんじゃないかっていう怖さがあって。タピオカみたいに、流行りが過ぎたら忘れ去られるようにはしたくない。だから、うちは動画とかはやってないんです。

カナさん

私は逆かも。それも分かるんですけど、今は昔ほど儲かる仕事じゃなくなっていて、せっかく始めたのに認知度が広がらずに無くなるよりは、SNSを使った方がいいと思う。今の時代、SNSのパワーは本当にすごいですから。ブームで終わるんじゃなくて、新しい喫茶店の使われ方として普及していくんじゃないかな。

最終章:喫茶店文化の海外進出

インタビュアー

今後、喫茶店が海外進出していく可能性はあると思いますか?

店主

僕はすると思ってます。この独特の、いい意味でごちゃごちゃした空間って海外にはあまりないみたいで、すごくウケがいいんですよ。一杯ずつ丁寧にハンドドリップで淹れるっていうスタイルも、日本の茶道みたいに感じられて喜ばれる。お寿司が"SUSHI"になったみたいに、喫茶店も"KISSA"として海外に広まる可能性があるんじゃないかと感じています。

インタビュアー

喫茶店は「間」を大事にするような、日本人特有の文化から生まれたものだと思っていました。海外で受け入れられるのか、そして文化が変容していくことについてはどう思われますか?

店主

その国のアレンジが加わるのは面白いですよね。インドで喫茶店ができたらチャイが出てきたりとか(笑)。それはそれで見てみたい。僕らは喫茶店という文化を、一過性のブームじゃなくて、日本の文化としてちゃんと伝えていきたいんです。海外で注目されることで、日本国内でまた新しい層に魅力が再発見される「逆輸入」の効果も期待できるんじゃないかと思っています。